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細胞を活性化するモノ

たまに活性化しないモノ

倍音

最近、音の人体に与える影響に関心がある。

特に「倍音」に関心が。

 

本を探したところ見つけたのがこれ。

尺八奏者の中村明一氏が書いた「倍音」 (春秋社 2010年)

 

 

尺八奏者でありながら、国立大学の工学部出身の著者ならではの

理系の文章がするすると入ってくる。

 

音についての面白いことが盛りだくさんの内容だったが

特に下記の2つが心に残った。 

 

聴覚は視覚ほど意識的に受け取られない。

だからこそ、知らないうちに大きな影響を受けている。

  

低周波に囲まれている都会の人間には

リラックスできるとされる高周波の音が足りていない。

 

美しいものを観たり、美味しいものを食べたりするのと同じように

意識的に高周波の音を取り入れる ことが必要なんだな。

 

下記、長めのメモ。

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■音とは

・音を定義すると

「ある媒質における圧力変化が聴覚によってとらえられたもの」

わかりやすく言うと

「空気などの圧力の変化が耳などに伝わったとき、それが音として知覚される」

 

倍音とは

・一般的に音は、ひとつの音として聞こえる場合でも、複数の音による複数音からなっている。

・「ひとつの音」と思って聞いているなかに、さまざまな音が含まれており、音色(音質)をつくっているのが「倍音」。

・音に含まれる成分のなかで、周波数の最も小さいものを基音。その他のものを倍音と一般的に呼ぶ。

倍音は英語では、「オーバートーン」または、「ハーモニックス」という。

 

■人間の聴覚の対応

・人間の聴覚能力として最も敏感な音域は3000~4000Hz

(人間の可聴域は20~20キロHz)

・話し声は男性で100~150Hz、女性で200~300Hz。声楽のソプラノの上限も1300Hz。

 

敏感な周波数帯域(3000~4000Hz)とは

・枯葉を踏む音、呼吸音、風の音などは敏感な周波数帯域(3000~4000Hz)。原始時代これらの音は、危険を察知するなど生きていくために非常に重要だったため、この帯域を聴きとれるかどうかが生死に直結していた。

・ピアノは基音の上限が4000Hz、倍音は~7000Hz。

尺八は基音の上限が2000Hz、倍音200,000Hz(200キロHz)

 

■2つの倍音

倍音には「整数次倍音」と「非整数次倍音」がある。

 

■整数次倍音

・弦が振動するとき、現全体が揺れているように見えるが、実際には全長だけではなく、1/2、1/3、1/4・・・というような振動が起こっている。弦の全長を波長とすると振動の音が基音、1/2、1/3、1/4・・・等の整数分の1の長さを波長とする振動の音が整数次倍音

・基音に整数次倍音を加えていくと、艶のあるギラギラした感じの音になる。

・声や弦楽器や管楽器の音の中に自然に含まれている。

・西洋のクラシック音楽は、主として基音と低次の整数次倍音でできている。

・言語において、母音は整数次倍音が主体

 ・日本の著名人で整数次倍音が強いのは、美空ひばり郷ひろみ黒柳徹子タモリ

・民謡、謡曲、声明など日本の伝統的な発声法も基本的に整数次倍音を多く含む。

・日本人の普通に話す声も、本来整数次倍音の強い声だった。しかし現在では、倍音が少なく基音が強い声の人が多くなってきている。

 

■非整数次倍音

・弦がどこかに触れてビリビリとした音を発することがある。このように整数倍以外の何かしらの不規則な振動により生起する倍音が非整数次倍音

・基音に非整数次倍音を加えていくと、風のような音になる。

・濁った音、ざらざらした音、ガサガサした音。少しソフトで優しい感じも出てくる。

・ハスキーヴォイスが非整数次倍音を含む声で、日本の著名人では、森進一、八代亜紀宇多田ヒカル明石家さんまビートたけし

・日本伝統音楽の発生の中では、「語りもの」と呼ばれるジャンルに属する義太夫節、説教節、浪曲などに多く含まれる。

・日本の伝統音楽では、この非整数次倍音を非常に重視し効果的に扱ってきた。尺八、三味線、琵琶、能管など、海外から入ってきた楽器をすべて、非整数次倍音が出るように改良した。この点が中国、朝鮮の楽器と似て非なるところ。

・日本語では、協調したり、表情をつけたりするときには、非整数次倍音を使う。

 

■ハイパーソニックエフェクト

・26キロHz以上の音は、皮膚から脳に伝達される。その時その音により、視床の血流が増加し、脳基幹部を活性化するという「ハイパーソニックエフェクト」という理論がある。(脳科学者 大橋力氏が1980年代に発見)

・ただし、26キロHz以上の音だけがあっても効果はなく、可聴域の音と共になっている場合だけ、独特の効果が表れてくる。(「音と文明」大橋力 著)

熱帯雨林の環境音の周波数上限は100~130キロHz。

都市の環境音の周波数上限は5~15キロHz。都市の環境音は低密度、単純性、単調整がはなはだしい。

・人間はもともと、高周波のとんだ熱帯雨林に住んでいた。高周波を聴くことでストレスを軽減し、リラックスできる。しかし、現代の都市にすむ日本人は豊かな自然との乖離が著しく、音楽を聴くと言っても20キロHz以下のCDや16キロHz以下のダウンロードされた音楽を聞くのみ。

・この状況は人間にとっても非常に危機的な状況なのではないだろうか。(大橋氏)

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※ハイパーソニックエフェクト関連の記事

ハイレゾ感動の源を解き明かした「ハイパーソニックエフェクト」 | Gaudio+PCオーディオfan 2016/2/12

・ハイパーソニックサウンドは時差を伴って脳波α波を増大させるが、立ち上がりが遅い分、高周波がなくなっても残像のようにα波が残る

・ハイパーソニックエフェクトを導くには、ミリ秒オーダーのごく短い時間で揺らぐ複雑で非定常的な超高周波が必要であることが分かりました。実在の音で言えば、例えば日本の尺八とか、バリ島のガムランのように、40キロヘルツ瞬間的には100キロヘルツに達する豊富な高周波を含むとともに、ミクロな時間領域の中でも劇的に変化する音です

・人間は聞こえない超高周波を耳からではなく体の表面で感じている

 

ハイレゾを良い音と感じる謎を解明するハイパーソニック・エフェクトとは? | タマガワオーディオWEBマガジン  2014/8/25

・音楽家 山城祥二として知られる科学者・大橋 力氏はアーティスト・グループ『芸能山城組』を主宰し、ビクターから12枚のLP/CDを出すとともに劇場アニメ『AKIRA』の作曲・指揮・音楽監督としても有名

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■日本は響かない国

・日本は非常に湿気を多く含んだ自然環境にあり、響かない空間。音が響かないと相対的に高い音、倍音が聞こえてくるようになる。

・日本人が伝統的に住んでいた家は畳、紙の障子や布の襖といった、いわば吸音材に囲まれたような暮らし。こうして日本人は一層、高い音倍音に敏感になった。

・西洋の場合は、家は石やレンガでできてきていて、非常に音が響く空間。響く空間においては音が反射する。すると反射のたびに高い方の倍音が吸収されてしまい、それらを聞くことが難しくなる。低い倍音は、平行面により定常波となり増幅される。それゆえ、西洋においては日本とは反対に基音を主体した音楽が発展した。

 

■日本語という言語

日本語の特徴は言葉の音響的変化が大きいということ。常に子音のあとに母音が来るという制限があるので、音の組み合わせの可能性は少なく、音声構造が単純になり、同音語が頻出する。それを区別するために音響の変化が大きくなる

・日本人は非常に高度な聞き分け能力を、毎日生まれたときからトレーニングしているとも考えられる。

・日本人は非言語性の表現のなかで身振り手振りはどの感情表現は控えめだが、音声・音響表現にはより敏感であるという研究結果も出ている。(重野純「感情認知における視聴覚情報の統合と文化の影響」)

 

■脳と倍音

・もともと倍音が強い音というのは、火山の爆発、地鳴り、台風など人間にとって異様な状況の時に現れる音だった。

倍音が強くなると脳の状態が通常とは異なった状態になる。

 

■視覚と聴覚

・情報は五感で知覚される。触れる、味わうといった直接に接触する知覚方法の場合、一度触れてしまうと、そこである一定の値の情報に接続することになり、それ以降はあまり情報量の変化は起こらない。

・しかし、光や音の場合、情報は波なのでその情報が発生すると次々に電波しながら通り過ぎていき、受信者は非常に多くの情報量にさらされる。

・受容器官としての視覚、聴覚は解像度が高く、処理速度も速いので、多量の情報の受信が可能。

・光と音の感じ方の違いは、聴覚の方が速く、時間分解能力が高いということ。

・また視覚の場合、その情報が意識下で認識されやすのに対して、聴覚は意識下で認識しにくい部分が大きい。すなわち音は、無意識の深い領域にアプローチする貴重な手段。

 

■音は脳が創り出している

・私たちは、物理的な音を直接聴くのではなく、脳で音刺激を作り直して聴いている。(力丸裕「存在しない音を脳が創り出す仕組み」「音は耳ではなく脳で聴く」)

・音は自然界にあるときは、単なる空気の振動。その中にある範囲内のものが、聴覚で捉えられ、脳で創りなおされて、音として知覚される。

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松岡正剛さんが分かりやすくまとめていらっしゃるので、こちらもどうぞ。

1492夜『倍音』中村明一|松岡正剛の千夜千冊